君のため一つの声とわれならん失いしし日を歌わんために
空にまく種子選ばんと抱きつつ夏美のなかにわが入りゆく
わが寝台樫の木よりもたかくとべ夏美のなかにわが帰る夜を
夜にいりし他人の空にいくつかの星の歌かきわれら眠らん
空のない窓が夏美のなかにあり小鳥のごとくわれを飛ばしむ
遅れてくる夏美の月日待ちており木の寝台に星あふれしめ
木や草の言葉でわれら愛すときズボンに木漏れ日がたまりおり
青空に谺の上にわれら書かんすべての明日に否と書かんと
滅びつつ秋の地平に照る雲よ涙は愛のためにのみあり
パン焦げるまでのみじかきわが夢は夏美と夜のヨットを馳らす
野に誓いなくともわれら歌いゆけば胸から胸へ草の実はとぶ
木がうたう木の歌みちし夜の野に夏美が蒔きし種子を見にゆく