夏美の歌 / 空の種子

君のため一つの声とわれならん失いしし日を歌わんために

空にまく種子選ばんと抱きつつ夏美のなかにわが入りゆく

わが寝台樫の木よりもたかくとべ夏美のなかにわが帰る夜を

夜にいりし他人の空にいくつかの星の歌かきわれら眠らん

空のない窓が夏美のなかにあり小鳥のごとくわれを飛ばしむ

遅れてくる夏美の月日待ちており木の寝台に星あふれしめ

木や草の言葉でわれら愛すときズボンに木漏れ日がたまりおり

青空に谺の上にわれら書かんすべての明日に否と書かんと

滅びつつ秋の地平に照る雲よ涙は愛のためにのみあり

パン焦げるまでのみじかきわが夢は夏美と夜のヨットを馳らす

野に誓いなくともわれら歌いゆけば胸から胸へ草の実はとぶ

木がうたう木の歌みちし夜の野に夏美が蒔きし種子を見にゆく

カテゴリー: 2.詩・短歌・俳句, 7.資料 パーマリンク