ニュースレター/昭和52年4月17日付

ごぶさたしておりますが、お元気ですか? 忙しさにとりまぎれてお便りを書く時間がなかなかできないので、ロンドンの友人ジム・ヘインズの真似をして、ニュースレターというの送ることにしました。三十人の友人に同じ手紙を書くことになりますが、ごぶさたするよりはよい、と多目に見て下さい。こちからから定期的(月1回位)お送りするつもりです。

最近、久しぶりに(実に十四年ぶり位に)また短歌を作りはじめました。べつにこれといった理由もなく、作りだしたいという衝動にかられるままに、ボツボツ作っています。そのうちに発表するかもしれません。霊媒とか呪術と少年時代の記憶がとが、結びついたものですが、やはりウォーミングアップ不足でうまくいかないようです。
「現代の眼」という雑誌に「さらば津軽」というエッセイを連載しており、いままで津軽三味線、永山則夫、方言詩、などのことを書き、いま出ている号には、トラホーム(盲目考)のことも書いています。次は人買いのことを書くつもりです。山椒太夫の話が、津軽で生まれたときいたので、そのことを少し調べてみようと思っています。
相変わらず映画は観ていません。先日は見のがしていた「砂のミラージュ」を見るつもりでしたが、急に仕事が入ってダメでした。
最近うまいと思ったものは「道玄坂の「麗郷」の肉員(バーワン)でした。これは誰にでも推薦出来る珍味だと思います。今月書く仕事は、ジュール・ヴェルヌについて「ユリイカ」に、書簡演劇について「現代思潮」に、そしてル・クレジオについての座談会を高松次郎、豊崎光一氏らと「現代詩手帳」で行います。
今年のダービーは全く何が強いのかわからぬ混戦状態ですが、十七日にフジテレビで、「皐月賞」の予想をすることになっています。(日がせまつてくると変わるかもしれませんが)。
毎週金曜日の「日刊ゲンダイ」をみたことがありますか? 夕刊紙ですが、見開き二ページで、僕と友人が、遊びのページを作っています。現金二万円を東京のどこかに埋めて、読者に捜してもらう宝探しなどもやっています、お暇な折、のぞいてみて下さい。
今の予定は、六月に僕の映画を全部まとめた「寺山修司映画個展」(西武劇場)、七月には「中国の不思議な役人」(西武劇場)の再演です。日がせまったら、チラシを送りますので、又、友人に勧めて下さい。そしてぜひあなたも見に来て下さい。「寺山修司の予告編」というおかしな本(光風社)が出来ました。本屋で立ち読みして下さい。まだ単行本に入っていない絵物語「巨人伝」の一部が入っています。
天井桟敷の秋の予定は九月の密室劇です。そのために八月には北茨城に合宿するつもりです。あとは又、次の便りに書きます。あたなたの近況もぜひお知らせ下さい。お返事を待っております。

寺山修司

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