童話

寺山修司が一冊の見事な童話集を遺していることは、
案外知られていないかもしれない。
演劇・映画・短歌・エッセイなど、往くとして可ならざるはなかった彼にとって、
童話とはもう一つの征服されるべき領土にすぎなかったとも言える。
あるいは、演劇や映画という気苦労の多い世界での活動からの、
それは軽やかな息抜きでもあったろう。
しかし、これらの童話に、私は寺山修司の最も純粋な状態における魂を見る。
もっといえば、彼の夢を出発点において支配したであろう原風景と同時に、
その夢の特権的に実現されているかたちが、そこにあるような気がしてならない。

英文学者・高橋康也

大人のための童話というジャンルがあってもいいのかもしれません。
寺山修司の描く童話集は、読者を不思議な世界へ導きます。
メルヘンなのにとても哲学的な匂いさえ感じられます。
彼の残した軌跡の中でも、小生の大好きなジャンルです。